《茗圃》の名物料理　清蒸魚件

　広東料理には豊富な海洋資源を活かした「海鮮料理」があります。海に囲まれた日本で広東料理が人気が高い主な理由として、海鮮料理がメニューにあることが挙げられるのはよく理解できるところですが、本場香港でいちばんの御馳走とされるのが、鮮魚の蒸しものです。

　香港の広東料理専門店では、ハタ系の魚を一匹まるごと蒸し上げて、それを分けて食べるというのが一般的ですが、多くの人達が集まって食卓を囲む中国と違って、日本ではお二人でのご利用がほとんどですので、コースの中の一品としてお召し上がりの場合や、他の料理もいくつかご注文いただくというようなケースを想定して、当店では、あえて「切り身」の魚をご用意させていただいております。栄に限らず、中華料理店で、魚を丸ごと一尾蒸し上げることは珍しいですが、この料理に限っては、冷凍にした魚では商品にならないので、切り身にしても、一尾まるごとにしても、ご注文の際には魚のコンディションについて確認が必要（私も、かつて評判のいいレストランでハタが一尾あるというので清蒸を注文したら、冷凍もので、失敗した経験があります）です。

　鮮魚の蒸しものは、通常は醤油味のタレに葱油をかけて、その上に香菜（コリアンダー）を載せるというのが一般的ですが、お好みでトウチ（黒豆みそ）や中国オリーブの塩漬けの風味を添えることもできます。また、ご予約の段階でおっしゃっていただければ、特別に仕入れたお好みのお魚を、丸ごと蒸して召し上がっていただくことも可能です。私だったら、広東料理専門店に行ったら、海老料理や帆立料理はなくとも、鮮魚の蒸しものだけは注文したいので、人数にあわせて適当な魚を仕入れてくれるように頼んでおきます。当店のサーヴィスを引き出してくれるお客様こそは、私達がもっとも大切にしたいお客様です。どうぞ、ご遠慮なく、ご希望をお申し付けください。